京都祇園円山公園 京料理いそべ                           「ひたひた」と「かぶるくらい」

技術的なこと
料理長
料理長

いつもありがとうございます。

今回は「ひたひた」と「かぶるくらい」について解説いたします。

「ひたひた」と「かぶるくらい」は和食の料理人なら

必ず覚えておきたい用語です。

是非、習得してください。

和食では煮焚き物をする時、煮汁の量を決めるために

「ひたひた」と「かぶるくらい」という表現をします。

「ひたひた」

「ひたひた」とは、鍋に焚く素材を決めてから出汁などの

煮汁をいれる量を表現するために使う用語です。

「ひたひた」の「ひた」は「浸す(ひたす)」からきているのかなと

勝手に思っています。

煮汁を入れて素材のアタマが少し出るくらいの状態をさします。

「ひたひた」は食材を煮炊きするのに最低限必要な煮汁の量です。

煮炊きする時の煮汁は多くても、少なくても上手に焚く事ができません。

煮汁が少ないと材料に味が浸み込まなかったり、充分に加熱ができなかったり

という事が起こります。

煮汁が多いと余計な調味料を使わなければいけないのと、

必要以上の火力と加熱時間を使う事になります。

「ひたひた」に適した料理

「しぐれ煮」「甘露煮」など煮汁を詰め上げる料理を煮炊きする場合

又は「鮑の蒸し煮」のように蒸し煮にする料理は煮汁を「ひたひた」にします。

鰻昆布巻

昆布巻や甘露煮も「ひたひた」の状態で焚いてから煮汁を煮詰めます。

牛のしぐれ煮

「ひたひた」を3時間ほどキープした後に一気に煮汁を詰め上げます。

鮑の柔らか煮

鮑など蒸し煮にする場合も「ひたひた」の煮汁で蒸し煮にします。

「かぶるくらい」

「かぶるくらい」はそのままで素材が煮汁をかぶるくらいまで

入れた状態をさします。

南瓜や小芋などの様に含ませ煮にする場合は地の量は「かぶるくらい」です。

含ませ煮に時に地をひたひたにすると、

アタマが出ている部分にあたりがのらなかったり、

浮力が働きにくいので煮崩れする可能性があります。

現場ではいつも同じ条件で煮焚き物をするわけではありません。

例えば、200本の鮎に6升の酒と水で上手く焚けたとして、

それなら100本の鮎の場合は3升の酒と水で焚けば上手くいく

というわけではありません。

鮎ひとつをとってみても大きさや形は個々に違います。

鍋などの調理器具も勤める調理場によってすべてのサイズを備えているとは

限りません。

自分の「ひたひた」と「かぶるくらい」を確立しよう

それでも常に同じように美味しく煮焚きするために

先人達が考え出したのが「ひたひた」と「かぶるくらい」

という基準、目安です。

この目安をもとに必要な調味料の量を計算して

煮焚きします。

あくまでも「目安」なので、その通りにの調味料の量で

焚いたからといっていつもの味付けになるわけではありません。

なので「あたりをみる」(味見する)という作業が必要になります。

一般的に鮎や昆布巻きのような煮詰めあげる素材の場合は

「ひたひた」、小芋や南瓜のような含ませ煮にする煮焚き物は「かぶるくらい」

の煮汁が必要になります。

「ひたひた」「かぶるくらい」の量の目安はその店の料理長によって

変わるので、その店その店のやり方に従いましょう。

前の店で「ひたひた」はこれくらいだったからと煮汁をきめると

次の店では「「ひたひた」に入れろと言っただろ!」

と怒られて

「いやいや、「ひたひた」に入れてますけど・・」

と心の中で口答えするなんて事もありますよ。

もうね、とにかく感覚みたいなもんです。

料理長の下についているときはその料理長のやり方に合わせて

自分が料理長になる時の為に自分なりの「ひたひた」と「かぶるくらい」

のイメージを確立しておきましょう。

by 料理長

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